家づくり援護会が自ら設計・監理を行う理由

 工務店向け月刊誌(日経ホームビルダー2017/7月号)の記事で今後、新築住宅の施工トラブルが増えると思うか?というアンケートを新築木造住宅の施工もしくは設計に携わる実務者にインターネットで実施したところ、回答のあった方のうち53%の方が増えると答えている。

理由として、「コスト不足もあり人員不足で一人の監督の能力を超えた業務が日常化している」。「監督や職人のスキルの低下が著しい」。「ZEHなどの新しい施策に対応するため新しいものを取り入れているが耐久性などの問題が発生しがちだ」。などの実務者の意見がある。

先日、大手ハウスメーカーが設計・施工した完成済みの住宅の検査に伺った際、軒天の換気口が1/3ほどが外壁に埋まっている現場を見た。
その住宅は長期優良住宅の申請も行っている現場であり、
所定の小屋裏の換気量の確保は長期優良住宅としての必須条件となっている。
この住宅の周囲を確認すると大半の箇所で換気口が外壁にめり込んでいる。

なぜそんな事になるのか。
それは現場を管理していなかった監督が悪いのか、取り付けた職人が悪いのか、
それとも外壁にめり込む事を知っていながら外壁を施工した職人がわるいのか。
建築コストの競争にさらされながらも会社としては利益をあげなければならない、
そうなれば当然職人に支払う手間賃も潤沢というわけにはいかない。
職人はハウスメーカーが自社ブランドを確立するため使用できる部材を決定しそして与えられた物を取り付ける。
監督は多くの現場を掛け持ちして細かなことまで目が行き届かない。
職人は限られた手間賃と工期で工事を行っている。
そして会社が納入してくる物に対して異を唱えたところで自社ブランドにそぐわない物を
おいそれと変更出来ないことは百も承知している。

そんな事態は第三者住宅検査を導入すれば全て解決するのではないかと思われるかもしれない。
小屋裏換気口が外壁にめり込まないようにチェックすることを、
家づくり援護会を含む第三者住宅検査機関が検査項目にしているかと言えばしていないと断言出来る。
(出来た物をだめだと指摘することは出来ますが、工事の後戻りなど現場の負担は大きい)
それではその部分のチェックを第三者検査のオプションで追加すれば良いではないかと思われるかもしれないが、
使用する部材を現場で取り付けた場合、どのような不具合が予想されるのか、
それは設計図面と使用部材をあらかじめチェックしなければわからない。
しかしそれは原則建築確認申請に記載されている設計者(専任の設計者)が決めることであり、
その設計者が決めた内容を後追いするというばかばかしい行為が必要になり現実的ではない。
そもそも、第三者住宅検査は施工者とは違う目で現場を見るという本来現場監理者が行うべき行為が
なされていない現状が有り、その為に必要なわけで、設計まで第三者チェックが必要なのかという事になる。
コスト競争による需要者の方の不安や費用負担が増すばかりという悲惨な状況だ。

住宅は一品生産である。
設計図でその住宅や工法に沿った部材を検討し、現場では施工者と別の目である監理者が現場監理を行う。
それこそが欠陥住宅を予防する最良の方法であるという理由もあり
家づくり援護会自らが設計・監理を行っている。